執筆期間 2020/11/032021/7/13YouTube投稿

 

 

【わたしの沖田くん】  作者 野部利雄

 

 1980年にヤングジャンプで連載を開始した「わたしの沖田くん」

 

純粋で優しいが少しエッチな沖田総一と、まじめで好性格な沢村琴の学園ドラマです。

二人は小学生からの幼なじみでお互い相手を気にしているが、どうしても好きと言い出

せず毎回ドタバタ騒ぎを起こして話は進んでいきます。

 

 

 単行本「わたしの沖田くん」は20巻で最終回を迎え、主人公の総一と琴は結婚し敬子という女の子が生まれます。

そして最後に、以前暮らしていた和光荘に家族で訪れハッピーエンドを迎えます。

 しかし、最終話ではページの関係で展開が速く、かなり話が飛んでいますので多少ですがその穴を埋めようと思い、自分なりに総一と琴の物語をあの当時の感覚で創作してみました。初めて「わたしの沖田くん」を見聞きされる方もいらっしゃると思いますが、当時から知っている方も初めての方も、この駄作のストーリーにお付き合いいただけると幸いです。

 

 

話は、琴の誕生日に総一がプレゼントを持って琴の部屋へ訪れるところから始まります。

 

 

          それではよろしくお願いを致します。

 

 

 

 

 

 今日は琴の誕生日だ

総一はプレゼントを抱え琴の部屋を訪れた

 

トントン トントン

琴いるか!

 

すぐに部屋の中から琴の返事が聞こえてくる

 

 「総一 鍵あいてるから入ってきていいわよっ

 

総一は急いで靴を脱ぎ部屋に入った

 

はい琴、誕生日プレゼント!

 

プレゼントの包みをみた琴は

 「わーっ ありがとう総一

 「中身はなにかな?

 

琴は急いでプレゼントの包を開けた

 

 

バッ!

 

その瞬間箱の中から何かが飛びだした

 

 「キャー

琴は驚きのあまり気を失ってしまった 

 

 

総一のプレゼントは何とびっくり箱だった

 

しばらくして気がついた琴は目に涙を溜めながら

 「ばかぁ

  「どうしてそうなのよぉ

   「どうしてこんな事しかできないの・・・・

 

その言葉を聞いた総一は

うつむいたまま部屋を出て行った

 

バタン・・・

 

 

琴はひとり部屋で泣きながら

 「グスン グスン 総一のバカ・・・

  「いざとなると不器用なんだから・・・

 

 

部屋に戻った総一も素直になれない自分に、どうしていいのか悩んでいた。

・・・

 「・・・・・

 

頭をかきむしりながらじっと考える

・・・・・

  「・・・・

 

よし!

 

総一は突然立ち上り意を決して琴の部屋に向かった

 

総一は琴の部屋のドアを強くノックした

 

ドンドン    ドンドン

 

総一は大きな声で叫んだ

 

お~い琴!! あけろ~!

あけてくれー!

 

しかし中から何も返事がない

 

総一は業を煮やし

あけないつもりだなっ!

それなら

破っちゃる!

 

そう言うが早いか総一はドアに向かって走り出す

 

ガチャッ

 

ぶつかるまさにその瞬間ドアが開いた

 

ガン!?

 

総一は思い切り開いたドアに顔面を打ち付けた

 

それを見た琴は心配そうにしながらも、一言 

 

 「バカ・・・

 

総一はしりもちをつきながら顔をおさえている

イテテテ・・・

 

 「ごめん痛かったでしょ

 

総一は心の中で思う

これがホントの出鼻くじかれるってやつだ

 

 

その時、琴は総一の顔を覗き込みながら

 「ねぇ話ってなあに

  「ねぇ話って何よ

    「話っ!

 

先ほどの勢いは何処えやら 

琴の勢いにおもわずあとずさる

やっぱ、やーめたっ

 

 「そんなぁ〜!

琴は焦り引き留める

 

総一は、そうだ散歩しよう、散歩の間に考えればいいや

なぁ琴! 散歩でもしようか

 

  「散歩?

 

琴は不思議に思いつつ

  「うん、行きましょ

そう答え和光荘の階段を一緒に付いて降りてゆく

 

目的がない総一は、ただあちこち歩き回るだけだったが

いつの間にか公園の中を散歩していた

 

ふと総一の目に新緑の風景が飛び込んでくる

もう 春だねぇ

 

 「そうねっ 春ねぇ

 

春だ 春だ

と総一は意味のない返事ばかりくり返す

 

琴は総一から何か話があると思い静かについてきたが

いつまでも何も言わない総一にしびれを切らし

琴は総一に問いかけた

 「ねえ 話ってなぁに もう3時間も歩いているのよ

 

琴にせかされて総一は焦った

春よ 来い・・・・

 「早く来い・・・

  「歩きはじめた総ちゃんが・・・

 

相変わらずゴマかす総一に

 「うん も~

ギュッ

業を煮やし琴がお尻をつねる

 

ほんぎゃ!

総一は痛さのあまり飛び上がる

エッチ! 琴のエッチ!

 

琴は呆れたように顔を押さえながら

 「ばか・・・

 

そして総一に向き直り

  「いーかげんに話してよ

 

そう言われ総一も

「おう 話したるわい!」

「あのなぁ琴」

 

琴は少しあらたまりながら

 

 「ハイ」

 

と返事をして言葉を待っている

 

真面目な顔をした総一が

「ちょっと いいにくい事だ・・・」

 

琴はじっと聞き入っている

 「・・・・・ ・・・・・」

 

しかし総一は突然恥ずかしくなり

「やっぱ今日はやめにしよっ」

「チャハハハハ」

 

余りのことに琴はずっこけた

 

「帰ろか」

 

琴は公園から出て行こうとする総一の腕を引きよせ

真剣な面持ちで総一の顔をみつめる

 「そんなあ」

   「せっかく・・・・・」

 

 

琴はそう言いながらジッと総一の顔を見つめる

 

「困っちゃったなあ」

 「どーも言いづらくて」

  「困った」

   「困った」

 

「なんつったらいいのかなあ~」

 

琴は照れながら頭をかいている総一を瞬きもせず見つめている

 

そして総一は振り返り

「なあ 琴」

 

琴はちいさくうなずいた

 「うん」

 

その時ハトが大空に飛びたたった

 

「俺たち会ってから もうだいぶたつなぁ」

 

 「たつわねぇ」

 

「いろんな事があったよなぁ」

 

 「あったわねぇ」

 

二人は無言で歩きながらたくさんの事を思い出していた。

楽しい事や悲しい事、時にはケンカをした事も 

一緒に過ごしてきた日々が走馬灯のように思い出される

 

琴は総一の背中を見つめながらついてゆく

 

そして総一がつぶやいた

 

「なぁぁ琴 今日でひとまず終わりにしようか?」

 

 ビクッ 

  「!

    「!

 

琴は思ってもいない言葉に驚いた

 

「そいでさぁ」

総一はにこやかに琴の方へ振り返った

 

その瞬間 琴は総一のほほをたたいた

そして目から熱いものがあふれ出す

 

 「いやぁ 何の話だと思ったら そんな話だったの・・・」

両手で顔を押さえながら琴は泣いている

 

総一は自分の思いと違う琴の反応に驚いた

「えっ何で」

 

琴は顔を上げながら総一を睨みつけ

 「いーわよ あんたなんか」

   「とにかく総一の言い分はわかった!

 

 

   「さよなら」

 

 

琴はそう言いながら走り去ろうとする、

すかさず総一は腕を伸ばし琴を引き留めた

「あのねぇ」

 

パシッ 琴は総一の手を払いのけ

 「さわらないで」

 

しかし総一はもう一度 

琴に向かい大きな声でさけぶ

 

「琴!」

 

 

そして琴の両肩をしっかりとつかみ

「俺のいう事を聞け! バーロ~!!

「いいかあ 恥ずかしい言葉だからこれっきりだぞ!

 

総一は琴を真っ直ぐにゆびさしながら叫んだ

 

「俺が愛してんのはてめえだけでい!!

  「だから今日から新しく始まるんでい!

   「どーだ わかったかバ~ロ~!!

 

琴は突然の告白に金縛りにあったように動かない

 

総一も琴をゆび差したままうごけない

 

琴は驚きのあまり口を押さえ立ち尽くしている

 

思い切って告白をした総一だったが全身に震えが襲ってくる

 

ガク ガク

 

 ガク ガク

 

しかし琴からは何も返事がない

総一は少しがっかりし

「だめ か・・な・・」

 

ガク ガク

 

 

そのとき総一の指を琴の優しい手が包みこむ

 

「あっ・・」

 

琴は目をつむり優しくうなずいた

 

 「うん

 

!

 

ガクッ 総一は力なく座り込んだ

 

そしてまた震えがおそってきた

 

 ガク ガク

 

総一の震えが止まるよう琴は優しく頭をなでる

しかし総一の震えは収まらない

 

 ガク ガク

 

一呼吸置いて琴は叱りつけるように

 

 「男なら最後までカッコつけなさい!!」

 

そして満面の笑みで少しおどけるように

 

  「ねっ

 

総一はその言葉で我にかえり

 

「おうっ!!

 

勇気を取り戻した総一は 琴をそっと引き寄せ二つの影は一つになった

 

 

 

 

 

 

 

 

人影の無くなった公園で二人はブランコに座っていた

今まで言えなかった想いが止め処なく溢れてくる

いつの間にか夕焼けが二人を包み込んでいた

 

琴は黄昏ていく空を眺めながら

 「ねぇ総一 あとで一緒に晩ご飯をたべましょうよ」

  「あなたの好きな物を作ってあげるわ」

 

隣でブランコをこいでいた総一は嬉しそうに

「ほんと やった!」と子供のように声をあげた

 

そして二人は手を取りながら公園をあとにした

しばらく歩いていると総一は何か思い出したように

  「ねぇ琴 途中で買い物していいかな?

 

 「えっ 何か欲しいものでもあるの?

 

笑顔で琴を見つめ

「ちょっとねっ

 

琴は何かなと思いつつ

 「ウン」 

とうなずいた。

 

 

もうすっかり陽も落ちた頃、二人は和光荘にかえってきた

総一の両手には沢山の買い物袋がぶら下がっている

琴はドアの前で自分の荷物を受け取り

 

 「総一っ 用意できたらそっちに行くね

 

「わかった待ってるぜよ!

琴を見届け総一は自分の部屋に帰る

 

少しすると琴の部屋からコギみ良い包丁の音といい匂いがただよって来た

 

総一は何かを思いつき部屋の中で作業をはじめた

 

トントン 

    トントン 

 

しばらくして、琴の部屋から壁を叩いて呼ぶ音が聞こえてきた

総一は急いで琴の部屋に向かった。

 

ガチャ

 

「琴っ 入るぜよ」

 

そこには、両手いっぱいの料理を持った琴が立っていた

 「総一っいま手がふさがっているからドアを開けてくれる?」

 

総一は急いでドアを開け琴の料理を受け取った

 

 「お待たせ今日は総一の大好きなエビフライよ!

 

琴はテーブルの上に料理を置いた

そして琴が辺りを見渡すとささやかな誕生日の飾り付けがなされていた。

 

その時 

「琴!誕生日おめでとう!!

 

 

琴は呆気に取られていたが嬉しさに目がうるむ

 「ありがとう総一

 

「はい琴プレゼント!

総一は恥ずかしそうにプレゼントを渡した

 

琴は笑顔でプレゼントを受け取りながら

 

 「わぁ~ありがとう総一」

 

  「・・・・・」

 

   「でも前みたいにビックリ箱じゃ無いでしょうね」

 

琴は慎重に包みを開けた

箱の中には子猫のブローチが入っていた

 「わぁ かわいい!

  「ありがとう総一

 

チュッ!

 

と言いながら総一の頬に口づけをした

 

プレゼントのブローチを身につけた琴が

 「さぁ お料理が冷めちゃうから二人だけのパーティーをはじめましょ

 

「いただきまーす」

直ぐに総一は大好きなエビフライにかぶりついている

そんな姿を眺めながら琴は微笑んでいた。

 

食事も終わる頃、琴は時計をみた

 

 「あら もうこんな時間」

  「ねぇ総一お風呂行きましょうよ!」

 

「え〜どうしようかな」

 

 「ダメよ毎日お風呂に入らないと」

琴に言いよられ

 

「よし! 行くぜよ」

急いで総一は残っているお皿を空にした。

 

       ・

       ・

       ・

       ・

       ・

 

 

お風呂上がりの帰り道 琴は夜空を見上げながら

 「今夜はキレイな星空ね」

 

総一「・・・」

 

 「覚えているっ? 前もこんな事があったわね」

  「そのあとお酒を飲んで酔い潰れちゃったけど フフッ

 

しかし総一から返事がない

 

 「ねぇ総一 聴いているの!

 

総一はボーッと月明かりに照らされた琴を眺めていた

そして今までと違う感覚を感じていた

 

 「総一!

 

  「総一っ!」

ハッと我に返る

 

 「どうしたのぼーっとして」

 

総一はあわてて

 

「いや今日の事を思い出していたんだ」

 

 「今日の事?」

 

総一は琴を見つめ

「そうさ 新しく始まるこの日を」

 

それを聞いた琴は総一の腕にそっとしがみついた

 

 

和光荘に戻りお互いの部屋の前で目を合わせて無口になる二人

気まずい雰囲気の中 琴が笑顔をみせながら

 「今日はとても嬉しかったわ 総一」

 

そして総一を見つめる

 

総一は頭をかいて照れている

「・・・・・」

 「・・・・・」

 

琴はうつむきながらじっとしている

何も言わない総一に琴は少し寂しそうな表情を浮かべ

 「おやすみなさいあなた」

 

そう言葉を残し、ゆっくりとドアの奥に消えていった

 

 

パタン

 

琴の部屋のドアが閉まり自分の部屋に戻る総一

 

情けない自分の頭を叩きながら

 

「なぜ一言いえないんだ〜 オレのバカ野郎」

 

ふてくされながら布団をかぶるが少しも眠る事ができない

 

総一はいつまでも眠れず悩んでいた

 

   カチ   カチ   カチ

 

部屋には時計の音だけが虚しく響いていた

 

その時

 

 コン 

 

どこかで小さく音が聞こえてきた

 

  コン  コン

 

音は琴の部屋から聞こえてくるようだった

 

総一はハッとし

「琴が壁を叩いているんだ!」

 

総一もあわてて壁をたたく

 

  コン  コン

 

しばらく沈黙の後に鍵の開く音が聞こえる 

 

 

カチャ

 

しかしそれ以上は何も聞こえない

 

その時総一は昼間琴が言った言葉を思い出した

 

  「男なら最後までカッコつけなさい!」

 

総一は部屋を飛び出しソッと琴の部屋をノックした

 

しばらく沈黙の後ゆっくりとドアが開き、うつむいたままの琴が立っていた

総一は静かに言葉をかける

「ごめん琴」

 

琴は目に大粒の涙をため総一の胸をたたく

  「・・・バカ・・バカ」

 

そしてそっと琴を抱きしめるやがて部屋の奥に消える2人の影

 

     ・

     ・

     ・

     ・

     ・

 

 

窓の開く音で総一は目を覚ました。

振り向くと隣に寝ていたはずの琴がいない

 

総一は辺りを見渡していると

「総一

優しい口調で自分を呼ぶ声が聞こえる

琴は淡い夜明けを見つめていた

 「私達どうしてもっと早く素直になれなかったのかしら?」 

 

総一は琴を見つめながら

「いままで色々ごめん」

 

琴はあわてて手を振りながら

 「総一が謝ることなんてないわ 私も意地悪ばかりして」

 

総一は真剣な顔で琴に話しかける

「琴は何も悪くないよ」

 「これからは自分の気持ちに素直になるよ」

「琴も俺に何かあったら遠慮無く言ってくれ」

 

総一は微笑んでいる琴に向かい

「琴 もう寒いからこっちに来なよ」

 

 

 「うん 総一」

と軽くうなずき戻ってきた

 

 

 

 

 

次の日大学で佐野と歩いていたさとみが琴たちを見つけた

いつもと違う雰囲気に

「ねぇ琴 どうしたの今日は沖田くんと腕を組んだりして」

 

ひとみは二人をからかうように

「もしかして2人出来ちゃったんじゃないの アハハ」

 

琴は恥ずかしそうに下を向いている

さとみは総一を見ると総一も照れ笑い

「チャハハ」

 

さとみは少し驚きながらも、優しい言葉で

 「琴・沖田くんおめでとう」

  「何も恥ずかしがることないは、

    みんなあなた達二人がこうなるのを待っていたんだもの」

 

琴がさとみを見ながら

 「ありがとうさとみ」

 

さとみは総一のほうに向き直り

「今夜はパーッといきましょうよ!もちろん沖田くんのおごりでね」

 

ずっこける総一

 

となりで話を聞いていた佐野が 

「あまり遅くなるなよ 二人の寝る時間が無くなるぞー」

 

それを聞いて琴が真っ赤になった

 

「なんて事言うのよ!エッチ」

バチっとさとみのビンタが炸裂した

     ・

     ・

     ・

     ・

     ・ 

夜になり総一の部屋で宴会が始まった

 

「我らがマドンナ琴ちゃんと沖田のカップル誕生に乾杯!!」

 

みんなは思い思いに持ち寄った酒を酌み交わし

二人を心から祝福した

 

いつしか酔い知れ みんなは不甲斐ない総一に気合を入れはじめた

 

「沖田!琴ちゃんを泣かしたりたら承知しないぞ」

 

「そうですよ先輩 ぼくも承知しませんから」

 

「なんでお前みたいなやつに琴ちゃんみたいな素晴らしい女性が?」

 

 

その言葉を聞き総一が立ち上がった

そして胸を叩き自信に満ちた声で喋りだす

 

「ほおがひーおどこだかけらぜよ」

 

 

しかしその声は呂律がまわらず聴き取れない

 

「なんだって沖田!もう一度言ってみろ」

 

総一は一呼吸おいて喋りだす

 

「ホレがいい男だからぜよ!」

とたんにザブトンが飛んできた

 

それに当たりぶっ倒れる総一

 

 

それを見た琴は慌てて総一に駆け寄る

 「みんなひどいじゃない!

   総一にもいいとこあるわよ!」

 

    「たとえばねっ!」

 

みんな静かに次の言葉を待っていたが琴はとっさに何も思い浮かばない

 

 

しばらく沈黙の後、

 

「ワハハ」

  「あはは」

 「キャハハ」

   「何はともあれ琴ちゃんと沖田に乾杯!」

 

 

 

宴会も終り酔い潰れている総一を眺めながら

 「今日は大変な1日だったわねえ 総一」

 

しかし総一からの返事がない

 

 「ねぇ総一?寝てるの」

  「ねぇってば」

 

近くから琴が総一の顔を覗きこむ

その時、泣いている総一が目にはいった

 

琴は驚き

 「どうしたの総一!」

 

  「具合でも悪いの」

 

    「大丈夫?」 心配そうな琴

 

その時、総一は起き上がり

「大丈夫だよ 琴!」

 

一呼吸おいた総一はギュと琴を抱きよせた

 

 

「琴 おれが泣いていたのはね」

        ・

        ・

        ・

総一は琴の耳元でささやくようにつぶやいた

 

「それはね」

 

「オレが世界一の幸せ者だからぜよ!」

 

 

 

 

 

 

 

        完